町並みに溶け込む庭と、
100kgの沓脱ぎ石
更地から「家と庭」を同時に考える
風致地区・盆栽町という、景観条例の厳しいエリアでの挑戦です。
建物が建ってからでは搬入できない石や木がある。だからこそ、建築工事と連携し、先回りして庭の骨格を作る。
そして最後には、重機が入らない難所を「人力」で攻略するドラマが待っていました。
本当に何もない更地。この状態での設計は結構難しいですが、奥へと長い敷地をどう活かすか腕の見せ所です。


記念すべき地鎮祭にお招き頂き工事の安全祈願を行いました。
1. 着工前〜先行工事(建物が建つ前に)
邪魔者が何もない所での庭造り…何だか変な感じですが、これを逃すと資材搬入が不可能です。
12月中旬、裏庭造りスタートです。


置き場から遠く離れた現場に、目一杯積み込んで来た材料を運び入れます。
この量を後から人力で運ぶことになったら…想像するだけでドキドキします。先行工事は大正解でした。
今回ユンボを入れていないため、手掘りで進めます。…と、掘っているのはT様ご主人!
「自分たちの庭だから参加したい」という熱い想い。ここからチームT様邸の共同作業が始まりました。
建物がないので不思議な光景ですが、窓の位置や目隠しを計算して裏庭の骨格が完成です。
これだけ大きな建物が建つのですから、先行工事でないと石はおろか植木も入れられません。


2. 現場での調整(窓からの見え方)
年が明け、水やりを兼ねて現場確認。基礎の型枠を組んでいる最中でした。
地縄の状態よりもっとデカく見えます…造った裏庭があんなに遠くに。
この時点ならまだ移動は出来るので、もう一度窓位置や目隠しをチェック。
図面で確信は持っていても、実際に建ってみないと分からない部分もありますから。
そして建前。50tラフタークレーンが登場!家建てるのに50tが入るのは初めて見ました。
トラックで運ばれてきたユニットには、キッチンなども全て取り付け済みです。


部屋が空を飛んでパカッとはまる姿は圧巻でした。


肝心の裏庭の配置も、窓から確認させていただきバッチリ狙い通りの位置!安心しました。
しばし内装仕上げを待ちます。


3. 季節をつなぐ(枝垂れ梅)
中庭の主役になる枝垂れ梅。工事のタイミングには花が終わってしまうため、一度市場から仕入れて会社の置き場で管理します。
残念ながら花後の施工となるため、置き場にて満開を迎えてしまいました。
おかげで華やかなお花見ができちゃいました(笑)。来年からはT様邸で咲き誇ります。
4. 外構工事スタート・お施主様との共同作業
いよいよ着工です!表から見るとそうでもないですが、横から見るとすごく大きな建物。
この表の玄関脇を抜けていくと…


お客様に確認すると、こちらで造って欲しいとのこと。見積もり外ですが、なるべく安く、かつ良いものを提案します。
まずは昨年末に造った裏庭に使うサツキの仕入れ。市場で積み込み、現場へ向かいます。


砂埃防止の防草シートを剥がし、サツキを植栽。石が柔ら味を出して庭に厚みが増しました。




ビシッと刈り込み、砂利入れスタート。
ここで綺麗に咲いているのは「カネコゲンカイツツジ」。裏庭をパッと明るくしてくれます。


5. 幻の階段とアプローチ
急遽造ることになった階段。アプローチと同じ御影石を使うことに決定。
それに合わせ付近の設計変更をお客様に進言し、了解をいただきました。掘削して砕石を転圧します。


ちょうどモミジの芽吹きの頃。可愛らしい葉に癒やされます。
建物内からの見え方もチェック。この季節はカネコゲンカイが主役ですね。


そしていよいよ登場、満開を終えた「枝垂れ梅」。来年はここで咲きます。
位置を決め、いよいよ階段造りスタート!


ここでもご主人登場!キッチリした仕事で安心してお任せできちゃいます。
御影石の縁石の中に平板を入れ、アプローチからの繋がりと豪華さを演出。


一段一段を12cmの高さに抑え、歩きやすくしました。
階段から表の玄関に向けて、小さいサイズの御影石平板を敷設していきます。小さいですがやっぱり石、重いです。


6. 植栽と石張りパズル
同時に植栽もスタート。まずはシンボルツリー「ヒメシャラ」。
5mを超える大木で、一本だけでも場の雰囲気を変えてしまいます。


ブロック基礎を作り、ソヨゴも植栽。
今回積むブロックはマチダの「ワイルドストーン」。ランダムであまりブロックに見えない、道行く人が触っていく不思議な素材です。


そしてアプローチの乱張り。お客様主体の施工です!
黒御影石の面取り加工済み。切断なしで合わせるため、大量の石からパズルのように合わせます。
3倍近くの材料を用意し、ご夫婦で仮置きしていただきました。


暗くなる頃に仮置き完成!翌日、腰の痛みを抱えながら一緒に貼り付け。
丁寧な仕事っぷりが生きています。


奥では家庭菜園部分に枕木を設置し、良質の土を入れて畑にしました。


7. アプローチ完成と高木植栽
T様ご夫婦の丁寧な仕事へのお礼として、綺麗な模様の大きな川石をサービスさせていただきました。
これを設置してアプローチ脇を豪華に!サツキも添えてアプローチ完成です。




最後の高木類の運搬。現場に到着し早速植え込んでいきます。
最後に植えるのは、門周りを優しく演出する「ハウチワカエデ」。固いブロックの雰囲気を和らげます。




8. 駐車場工事〜休工〜再開
駐車場部分の掘削&砕石転圧スタート。
残土はハウスメーカーさん紹介の処分場へお客様が運搬。高さを決めて砕石もガッチリ転圧完了です。




前庭では芝張りが完成し、明るくなりました。玄関脇から第2玄関への通路も緑溢れる雰囲気に。


駐車場の土間コン準備。一発で打ちたいところですが、お客様が出入りできなくなるので二回に分けます。
生コンをネコ押し…おなじみの左官・山田さんにも前橋から出張してもらいました。




サツキが一斉に芽吹き、良い感じになってきました。
植木も石も水を欲しがる季節、たっぷりと潅水します。


そして通路の奥には、建仁寺垣を作成。
高さを低くして隣地との隔たりにならないよう配慮。枝垂れ梅の下には水鉢を設置し、水音を楽しめるようにしました。




庭は完成しましたが、カーポート工事が遅れているため一旦「休工」。
梅雨明けを待ちます。




ようやくカーポートが付き、梅雨明けに打設開始!…と思ったら雨で延期(泣)。
やっとの思いで打設開始しましたが、梅雨明けで超暑い!山田さんも悲鳴ですが、仕上がりはビシッと完璧です。




9. クライマックス:100kgの巨石搬入
最初から予定していれば楽だったのですが…現場は既に完成間近。
人力で挑みます。
クレーンで行ける所まで行って、あとはひたすら人力!
第1関門、狭い竹垣の隙間。試行錯誤し、冷や汗をかきながら通過。


第2関門、90度コーナー。建物や周囲を傷つけないよう考え…結局力ずく(笑)。
砂利の上でのレール変更は結構キツイです。


ここでご主人が参戦!奥様はカメラマン。
チームT様邸、総力戦です。このご主人の顔が全てを物語っています。
最後の難関、180度回転。角材を挟んでクルッと回転。
案外スルッと回り、みんなで感動!ここまで来れば勝負ありです。


撮影用に下駄。あんなに苦労したのに、最初からそこにあったような顔をしています。
怪我も事故もなく無事に据え付けられて良かった!T様、最後の最後までお疲れ様でした!


完成:町並みに溶け込む庭
思い返せば裏庭を造ったのは去年の12月。あっという間に半年以上経ちました。
これからは、T様邸にとってかけがえのない庭になっていくよう祈っております!


その後:育つ庭(一年後の様子)
そしてまた訪れた春!植栽が育ち、緑が濃くなりました。
時間が経つほどに深みを増していく、それが「育つ庭」です。









