水音奏でる「隆勢の滝」。
池を造らず楽しむ、循環する水の庭
側面の狭小地を、深山幽谷の景色へ。
前橋市N様邸。今回の現場は、建物の側面にあたる細長いスペース。
ご要望は「滝は欲しい。でも、管理が大変な池は造りたくない」。
この難題に応えるため、地下タンクを用いた循環システムを採用。「池のない滝」を実現し、玄関の低い窓と和室の掃き出し窓、二つの窓を「額縁」に見立てた、音と景色を楽しむ庭を計画しました。
何もなかったこの場所が、どう変わるのか。
図面に落とすと、意外と広さがあることに気づく。
1. 石の搬入:完成図を脳内に描く
まずは主役となる「鳥海石」の搬入から。ユニック車で大量の石を運び込みます。
まだ何もない更地に、完成後の滝や石組みの配置をイメージしながら石を置いていく。お客様には「何がどうなるのかさっぱり分からない」と言われましたが、職人の頭の中にはすでに完成図が見えています。
狭い場所でも頼りになる相棒。
この石たちが、庭の骨格になる。
向きや顔を確認しながら配置。
ご主人も参戦!一緒に造る楽しみ。
2. アプローチの骨格:小道の作成
石組みと並行して、アプローチの小道を作ります。
御影石を土留めに使い、良質な土を搬入して植栽スペースを確保。植木を入れながら細かい石を組み合わせていくと、ただの通路だった場所が「歩きたくなる小道」へと変わっていきます。
基礎をしっかりと固める。
緑が入ると、道が浮き上がってくる。
細かい石で表情をつける。
植物たちへの最初の水。
3. 滝の心臓部:500Lタンクの埋設
「池のない滝」を実現するための心臓部。500リットルの貯水タンクを地下に埋設します。
ポンプで水を汲み上げ、石を伝って落ちた水が再びタンクに戻る循環システム。防水シートとアンダーシート(保護材)を敷き込み、水漏れのないよう慎重に施工します。真夏の太陽の下、黒いシートの上は灼熱地獄でした(笑)。
防水シートを守るための重要な一層。
水漏れ厳禁。慎重かつ迅速に。
背丈ほどある巨石を組む。
ここが水の出発点であり、終着点。
4. 試練と克服:オーバーフローの解決
システムが完成し、いざ試運転!……と思いきや、まさかの水漏れ発生。
原因は防水シートではなく「砂利」でした。綺麗に見せようと入れた細かい砂利が、水の戻りを堰き止めてしまい、水位が上がって溢れていたのです。
すぐに砂利を撤去し、大きな川石へ変更。結果として、より自然な「川の流れ」のような景観になり、怪我の功名となりました。
想定外の事態。しかし焦らず原因究明。
大きな石に変えることで、水通りを確保。
トラブル解決。より自然な表情に。
心地よい水音と飛沫。
5. 仕上げの鉄平石:重厚なアプローチへ
滝の調整と並行して、アプローチの仕上げに入ります。使用するのは諏訪鉄平石。
通常の3倍の材料を用意し、パズルのように形を合わせていきます。最後は「突き込み」作業でガッチリと固定。歩きやすく、見た目も重厚な石畳の完成です。
豊富な材料からベストな一枚を選ぶ。
石が動かないよう、魂を込めて叩く。
重厚かつ歩きやすい、職人の技。
橋を渡り、滝へと続く物語。
6. 狭小地の打設:人力バケツリレー
最後の難関は、狭い通路へのコンクリート打設。機械が入らないため、一輪車とバケツリレーでの手作業です。
雲ひとつない晴天の下、汗だくになりながらの作業でしたが、これで基礎は盤石になりました。
絶好の打設日和。
最後は人の力が頼り。
完 成:水音奏でる「隆勢の滝」
殺風景だった側面の土地が、深山幽谷の景色へと生まれ変わりました。
ご主人の名前を頂いた「隆勢の滝」から落ちる水は、心地よい音を奏で、
住む人の心を癒やします。
石、緑、水。三位一体の癒やし空間。
滴る水が波紋を描く。静寂の時間。
カエルの置物がお出迎え。「無事カエル」。
奥へと吸い込まれるような動線。
石の硬さを、枝葉が優しく包む。
中に入ると意外なほど広い。
玄関を入ると、まずこの景色が目に飛び込む。
朝食も晩酌も、この庭と共に。
マイナスイオンを感じる、自宅の避暑地。
ご主人作のフェンスが、最高の背景に。
優しいラインが引き立つ。
フッキソウとヤブコウジ。足元にも願いを込めて。
N様、美味しいお昼ごはんまでご馳走になり、本当にありがとうございました!
ご主人手作りのフェンスがあってこそ、この庭は完成しました。
これからも「隆勢の滝」の音色と共に、豊かな時間をお過ごしください!
