高台に佇む「禅の庭」。
水音と四季が響き合う、安らぎの聖域
敷地の「高低差」こそ、最高の舞台装置。
高崎市A様邸。道路から見上げる高台に建つ、モダンな和風住宅。
この敷地の最大の特徴である「高低差」。これを厄介者にするのではなく、奥行きと迫力を生むための最大の武器に変えました。
テーマは「四季を感じ、心癒される石庭」。
京都の禅寺を想わせる静寂、水鉢から滴る水の音、そして窓を額縁に見立てた借景。計算し尽くされた石組みと植栽が、日々の暮らしを豊かに彩ります。
空に近い場所。このロケーションを最大限に活かす。
無造作に積まれた石。ここから再生が始まる。
足元が不安定な状態。安全確保が急務。
畑仕事の方と目が合う距離感。目隠しと景観作りが必要。
1. 職人の意地:登れぬなら、切ってしまえホトトギス
最初の難関は、資材を運び上げるための急な坂道。弊社の3tダンプは回送仕様のため、後ろに支柱があり、この急勾配では擦ってしまって登れません。
「登れないから無理です」とは言えません。そこで出した答えは、「トラックの尻尾をカットする」こと。
現場のためなら、商売道具の形さえ変える。それが田熊造園の流儀です。
立ちはだかる急坂。これが最初の壁。
物理的に無理。さて、どうする?
思い切ってカット!迷いはありません。
満載の石材が無事に到着。執念の搬入完了。
2. 動線の確保:諏訪鉄平石の堅牢な階段
まずは生活動線の安全確保から。カーポートから勝手口へ続く道は、不安定な石積みでした。ここを厚手の「諏訪鉄平石」で作り直し、お子様でも安心して上り下りできる、美しく堅牢な階段へと再生させます。
使える石は活かし、配置を変える。
厚みのある石で、ビシッと決める。
ちょっと腰掛けられる場所も用意。
重機が入れるうちに、奥の巨石を据える。
勝手口へのアプローチも丁寧に。
バランスを見ながら配置。
ガタつきを一切許さない職人の手。
このタイミングで沓脱ぎ石もセット。
気合十分!暑さとの戦い。
3. 石組の骨格:高低差を「景」に変える鳥海石
庭のメインとなる石組み。高低差があるからこそ、石を組んだ時の迫力が増します。「鳥海石」を使い、土留めとしての機能を果たしながら、力強い景色を作り出しました。
重機を駆使し、巨石を操る。
完成形を脳内に描きながら据えていく。
庭のバランスを崩す石は取り除く。
石の硬さを和らげる緑のライン。
4. 植栽の魔法:アオダモの木陰と窓からの景色
石の骨格ができたら、次は植栽です。アオダモをメインに据え、その枝ぶりが窓からの景色(額縁)に収まるように計算して配置。室内から見た時、そこが一枚の絵画になるようにデザインしました。
いよいよ命を吹き込む工程へ。
この枝ぶりが、最高の影を落とす。
植木と石のバランスをミリ単位で調整。
ビシッと整え、凛とした空気を。
内側にも土の起伏をつける。
だいぶ形が見えてきた。
この時期の主役、ヤブラン。
涼やかな花が、夏を忘れさせる。
5. 水音の演出:竹と水鉢の仕掛け
この庭のハイライトは「水音」。湧き水をイメージして長い竹を引き、その先に水鉢を据えました。視覚だけでなく、聴覚でも涼を感じる仕掛けです。
石の間を縫うように水を引く。
源流から水が生まれるイメージ。
目と耳で楽しむ、至高の装置。
水音が、庭の静寂を深める。
同時進行で上段も仕上げていく。
一本一本、土の起伏に合わせて。
どんな場所でも手は抜かない。笑顔で施工!
玄関周りにも緑が入りました。
竹を伝って水鉢へ。
自然な雰囲気を出す下草たち。
6. 仕上げ:錆砂利が描く「静寂の海」
いよいよ最終工程。市場で厳選した材料を(カットした3t車で!)運び込み、仕上げに入ります。
タマリュウで島を作り、そこに「錆砂利(さびじゃり)」を敷き詰める。この瞬間が一番待ち遠しい。黒土の世界から、一気に明るく、引き締まった庭へと変貌します。
仕上げの材料を厳選。
相棒の3t車で現場へGO!
奥ではウッドフェンスも進行中。
この黒土の状態が...
こう変わる!島が浮かび上がった瞬間。
しっとりとした錆砂利が、和の風情を醸し出す。
完 成:心洗われる、天空の石庭
高低差があったからこそ生まれた、空に近い庭。
乾いた白さも美しいですが、水を打った時の「潤い」は格別です。
晴れの日も、雨の日も。家の中から眺める時間が、最高の贅沢になりました。
乾いた状態。明るく爽やかな印象。
高低差があるからこそ出せる、奥行きのある雰囲気。
スラッと伸びたアオハダが、窓辺に緑を添える。
ここに座って庭を眺める。至福の時間。
夏の暑さを忘れさせる、水の音色。
木々の間を抜ける風は、心地よい。
関東では苔の代わりにタマリュウが活躍。
アオダモの被りが、奥行きを演出。
最強のタッグ。四季の変化が待ち遠しい。
水を打つと一変。空気が落ち着き、石が輝きだす。
植物たちが呼吸を始める瞬間。
根元をしっかり守る。
今回の最大のテーマ。崖から水が流れ落ちる景色。
耳に優しい音色。
濡れた鉄平石は本当に美しい。
ナツハゼ、ヤマツツジがお出迎え。
この斜の姿が、和室からの眺めを引き立てる。
背景のウリンフェンスが、緑を浮き立たせる。
奥様お気に入りの、キッチン正面の景色。
緑に包まれる安心感。風が通り抜ける。
ふと目を上げれば、アオハダの優しい緑。
~ 2 Years Later & Lighting Update ~
庭は完成して終わりではありません。2年後、植物が馴染み、さらに夜の表情を加えることで、この庭は完成形へと近づきました。
ビシッと生え揃ったタマリュウ。管理の賜物。
木々も土地に馴染み、生き生きとしている。
昼とは違う、幻想的な表情。
影が踊る。夜の庭を楽しむ贅沢。
グレードアップ完了。24時間楽しめる庭へ。
A様、「家だけじゃダメですね」というお言葉、深く心に響きました。
これからも、この庭がご家族の安らぎの場所であり続けることを願っております。
末永いお付き合いを、よろしくお願いいたします!
