下がる景色を、上がる景色へ。
地盤を活かした「二段構成」の庭
雪国・沼田の勾配を攻略せよ。
沼田市S様邸。美味しい空気と美しい自然に囲まれた場所ですが、敷地には大きな課題がありました。「建物から奥へ向かって地盤が下がっていく」のです。
このままでは、家の中から庭を見ても目線が落ちてしまい、せっかくの広さが「間延び」して見えてしまいます。そこで私たちが提案したのは、庭を「上段」と「下段」に分ける**二段構成(ひな壇)**。
既存の樹木を活かし、現地の土を無駄にせず、雪国ならではのアプローチを施した、知恵と技術の結晶です。
春先でも雪が残ることも。ロウバイが咲く季節の着工前。
逆光で見にくいですが、奥へ向かってダラダラと下がっています。
ご夫婦で集められた植木。植えて3年以内なので根の状態は良好。全て活かします。
ブロックも斜めに積まれているほどの勾配。これをどう料理するか。
1. 解体と移植:遠方現場は「段取り」が命
沼田市は弊社の施工エリアとしては遠方になります。そのため、道具忘れや段取りミスは許されません。重機を投入し、既存樹木を掘り取りながら、同時に石材搬入のルートを確保する。パズルのような工程管理でスタートしました。
重機投入。ここから庭の骨格を変えていく。
まずは更地に近い状態へ戻し、再構築の準備。
根が良いのでスムーズに掘り取れる。これは大きな資産。
下層は岩盤並みに硬い。植物の根のために土壌改良が必須。
2. 搬入とロジスティクス:夜の積み込み
大量の鳥海石と、移植用の一時保管していた樹木。4トントラックと2トントラックを駆使し、効率よく現場へ送り込みます。夜間の積み込み作業も、スムーズな現場進行のためには欠かせない工程です。
庭の要となる鳥海石。大量に投入します。
奥までトラックが入れるよう、動線を確保。
翌朝一番で出発するために、夜のうちに準備完了。
「凄いことになってるね」と言われますが、これは序の口(笑)
3. 二段構成の出現:アオダモと石組み
いよいよ庭の骨格づくり。勾配を解消するために、庭を「上段」と「下段」に分けます。上段(建物側)と下段(奥側)の高低差を作ることで、建物から見た時に庭が立体的に浮かび上がります。
主役のアオダモ。この一本で空間の空気が変わる。
手前が上段、ユンボがいる場所が下段。この段差がポイント。
4. 鉄平石の階段:高低差を繋ぐ重厚な動線
上段と下段を繋ぐのは、極厚の鉄平石で作った階段。ただの通路ではなく、庭のアクセントとして機能するよう、石を組んで迫力を出しました。
厚みのある鉄平石。存在感が違います。
階段と石組みを一体化させ、自然な景色を作る。
歩きやすく、見た目も美しい。
沼田は秋が早い。作業中にも落葉が始まります。
5. 職人の知恵:残土再利用の「天地返し」
遠方の現場で最もコストがかかるのが「土の搬入出」。そこで今回は、既存の勾配を逆手に取り、残土を処分せずに地中深くへ埋め戻し、良質な土を表層に出す「天地返し」を行いました。これにより、土の購入費と運搬費を大幅にカットしつつ、必要な高さを確保しました。
あるものを活かす。これがプロのコスト管理。
赤城方面特有の黒土。石灰岩混じりですが良い土です。
経費削減と迫力ある景観。一石二鳥の造成術。
6. 雪国の知恵:滑らない「のみぎり」アプローチ
アプローチには御影石を使用しましたが、表面仕上げにはこだわりました。選んだのは「のみぎり」仕上げ。表面がデコボコしており、雪が積もっても滑りにくい。デザインだけでなく、この土地の気候に合わせた選択です。
雪国には必須のスペック。安全第一。
朝の冷え込み。植物たちも冬支度。
7. 仕上げ:砂利と菜園で整える
最後に砂利を敷き詰め、家庭菜園スペースには赤土を客土。砂利が入ることで「面」が整い、二段構成の奥行き感が一気に強調されます。
サツキを整え、ラインを出す。
砂利が入ると庭が明るくなる。
唯一搬入した赤土。美味しい野菜が育ちますように。
狙い通り。二段構成が奥行きを生んでいる。
のみぎり御影石の存在感。
上段も美しく整いました。
完 成:冬の造形美と、春の予感
葉が落ちても美しいのが「雑木の庭」の真骨頂。
勾配を整理し、建物が一段高い位置にあるかのような風格が生まれました。
雪国・沼田の冬も、この庭なら美しく乗り越えられます。
勾配を解消し、使いやすくなったエントランス。
下段から見上げると、建物に迫力がプラスされる。
夏は木陰を作り、冬は日差しを通す。
美しい樹形。
青空に映える枝の造形美。
葉がなくても、庭は生きている。
スッキリとしつつ、味わい深い空間に。
アッサリとしながらも品格のあるアプローチ。
一番勾配がきつかった場所も、心地よい空間に。
歩くだけで気持ちが良い。
上段は砂利を変え、山の遊歩道のような癒やし空間に。
視線を気にせず過ごせるプライベートエリア。
S様、遠方ながら大変良くしていただき感謝しております。
春には新緑が萌え、また違った表情を見せてくれるはずです。
沼田の四季と共に、この庭を育てていってください!
