50トンの石と雑木が織りなす「和の庭」。
広大な敷地を歩いて巡る、贅沢な時間
既存の樹木を活かし、新たな命を吹き込む
太田市のT様邸。広大な敷地に建てられたモダンなガルバリウムの建物。その前に広がる空間を、和の重厚感と雑木の柔らかさが調和する庭へと変貌させます。
「ただ庭を造るのではない、風景を創るのだ。」
既存の良い植木は移植して活かし、新たに50トンもの鳥海石と大量の雑木を投入。弊社でも最大級の物量と熱量を注ぎ込んだ、壮大な庭づくりの全記録です。
1. 解体・準備:未来の庭のための「根回し」
プロジェクトの始まりは、既存建物の解体から。しかし、造園屋の仕事は「更地にする」だけでは終わりません。敷地内には、前の持ち主様が大切に育ててこられた立派な植木たちが残されていました。これを無碍に処分するのは、我々の流儀ではありません。
工事の前年秋から、樹木の「根回し」を開始しました。根の一部をあらかじめ切断し、新しい細根の発根を促すこの作業が、移植の成功率を劇的に高めます。この地味で時間のかかる下準備こそが、数年後の庭の姿を左右するのです。春を迎え、最高の状態で移植が可能になりました。
移植を待つ樹木たちは丁寧に根巻きされ、一時的に仮植えされます。空いたスペースには、庭のベースとなる大量の土砂を搬入。ここから、全く新しい地形を創造していきます。
2. 石材・植木搬入:秋田から届いた50トンの巨石
この庭の骨格を担うのは、秋田県鳥海山から直送された銘石「鳥海石」。その総重量はなんと50トンオーバー。自社トラックに積み替えて現場へ搬入するだけでも大仕事です。一つ一つの石の表情(顔)を見極め、「この石はあそこの土留めに」「あの石は滝口に」と、トラックの上で既に構想を練り上げます。
さらに今回は、仲間の植木屋さんから特別に譲り受けた巨大なマキの木も搬入しました。これほどのサイズと樹形の良さは、今の市場ではなかなかお目にかかれません。最高の素材と最高の役者が揃い、いよいよ庭づくり本番が幕を開けます。
3. アプローチ・回遊路:庭を「歩く」楽しみを創る
玄関前のアプローチは、御影石の平板を使って構成します。まずは土をすき取り、砕石で固めた盤石な下地を作ります。この下地が甘いと、数年後に石が沈んだりガタついたりする原因になります。見えなくなる部分ですが、一切の妥協は許されません。
一枚一枚、丁寧に御影石を敷き詰めていきます。直線ではなく、あえて曲線を描くように配置することで、奥行きと柔らかさを演出。この庭のテーマは「歩いて回れる庭」。ただ眺めるだけでなく、生活の中で庭の中を歩き、季節を感じられるような動線を設計しました。
4. 植栽・石組み本番:クレーン2台が交差する現場
工事はいよいよクライマックスへ。クレーンを2台投入し、巨大なマキやモチを植え込み、並行して鳥海石を組んでいきます。木と石の位置関係は、数センチの違いで景色が全く変わってしまいます。クレーンオペレーターとの阿吽の呼吸で、ミリ単位の調整を行います。
主木となるマキの位置が決まれば、それに呼応するように石を据えていきます。奥から手前へ、立体的な景観が立ち上がっていく様は圧巻です。
5. 門周り・外構:東洋工業の意匠ブロック
造園工事と並行して、門周りの外構工事も進めます。使用したのは東洋工業の自然石風ブロック。建物のモダンな雰囲気に負けないよう、重厚で存在感のある門柱を築きます。造園と外構を同時に進行させることで、全体の統一感を図りながら、効率よく作業を進めることができます。
6. 小道・階段:諏訪鉄平石の延べ段
庭の奥へと続く小道には、大量の諏訪鉄平石を使用しました。スロープと階段を組み合わせ、変化に富んだ散策路を作ります。木々の間を縫うように延びる石畳は、まるで緑のトンネル。歩くたびに景色が変わり、新しい発見があるような、遊び心あふれる空間を目指しました。
一石一石、魂を込めて据え付けます。黒松の枝ぶりが石組みに掛かる景色は、偶然ではなく計算された美しさです。
ミニユンボを駆使して新たな道を切り開き、高低差のある築山を造成。立体的な地形を作ることで、平坦な土地では出せない奥行きと深みが生まれます。
7. 仕上げ・設備:細部まで宿るこだわり
玄関前のシンボルツリーには、市場で一目惚れした曲線美が美しいモミジを抜擢。ウリンの角柱や御影石ピンコロで足元を引き締め、モダンな建物に和の柔らかさを添えました。また、木目調のLED照明や、庭の各所で水やりができるよう井戸水の配管も整備。見た目だけでなく、管理のしやすさも追求しています。
そして、地味ながら最も重要なのがグランドカバーの植栽です。タマリュウを一本一本手作業で植え付けていきます。大変な重労働ですが、これにより土の乾燥を防ぎ、雑草を抑制し、何より庭全体の美観が劇的に向上します。
8. 最終工程:防草シートと砂利が劇的な変化を生む
いよいよ最終仕上げ。防草シート「ザバーン」を隙間なく敷き込み、その上に化粧砂利を投入します。今回は、しっとりとした和の風情を出すために「伊勢砂利(サビ砂利)」と、駐車スペースには清潔感のある「青白砂利」を使い分けました。
砂利が入ると、庭の輪郭がくっきりと浮かび上がります。石と砂利、そして緑のコントラスト。これぞ和の庭の真骨頂です。
完 成:スケール感と繊細さが同居する庭
土の量、石の量ともに弊社最大級。広大な敷地を活かしきった、迫力と癒やしを兼ね備えたお庭が完成しました。冬の景色、そして雪化粧。季節が巡るたびに新しい発見がある、そんな庭に仕上がったと自負しております。
Photography
T様、長期にわたる大規模工事をお任せいただき、本当にありがとうございました!
この庭が、ご家族の歴史と共に味わいを増していくことを楽しみにしております。
